パフォーマンスアートの表現が、芸術表現のひとつとして認識されるようになったのは1960〜70年代です。一般的に、パフォーマンスというと、演劇やダンスを連想される方が多いかもしれません。しかし、当初はハプニングまたはイベントと呼ばれ、その名の通り、決して練習し「上演する」ものではありませんでした。それは、アーティストがその身体を使い、生の、作り物ではない「出来事を起こす」といったもので、しばしばセンセーショナルな騒ぎとなりました。それらのハプニングやイベントは、当時の若者たちの反骨精神を反映した、一種の「表現の発明」と言っても良いでしょう。
こういった実践は、80年代以降、パフォーマンスアートと呼ばれるようになり、ビデオなどのメディアを使ったものや、観客参加型、ディスカッションを取り入れて、交流のツールとしての特徴が見られるようになります。
さらに21世紀になると、アーティストたちによるパフォーマンスは、グローバル化する世界の中でさらに展開していきます。アーティストたちは、世の中の時流に対抗するかのように、個人の身体、つまり“身ひとつ”という徹底したローカルさ(身体)を、むしろ意識するようになり、個人的で静謐な空間や内向的な表現を探求する傾向が強まっていきました。また、パフォーマンスの参加や交流のしやすさから、リレーショナルアート的なものにも活用されるようになりました。その一方、社会的な混迷と抑圧に対し、強く、あるいは皮肉な態度を示すアクションとしてのパフォーマンスを、より先鋭化したスタイルで打ち出すアーティストたちも出てきました。
パフォーマンスアート。それはもはや、決して先端的な前衛とは言えない表現形式ではあるかもしれません。しかし、むしろデジタルとアナログの区別がなくなったポストメディアの時代である現在、これからがアーティストたちが身体の存在を見直し、表現のツールとして、ますます生かしていく表現分野であると言えます。