<バックグラウンド>
現在、6人のメンバーで運営しているIPAMIAですが、はじめたきっかけは、現在IPAMIAの代表をしている山岡さ希子に起きた、個人的で小さな事件にあります。
パフォーマンスアーティストの山岡は、1992年から、ヨーロッパやアジアなどをパフォーマンスイベントに参加するために旅をしていました。2002年頃からは、当時ようやく廉価になったハンディのビデオカメラを持って、自身のパフォーマンスだけでなく、同じイベントに参加していた様々なアーティストの作品を撮っていました。そして、それらは、2015年頃までには、外付けハードディスク3台いっぱいに収められていたのですが、ある日、そのうちの1台のデータがいっぺんに全部飛んでしまうアクシデントがありました。そして、山岡はかなりのショックを受けます。そうして彼女は、エフェメラルな表現であるパフォーマンスアートの、その資料であるデジタルデータもまた、かなりエフェメラルであることに気づきました。
<アーカイヴの設立>
貴重な作品の記録を、未来に渡って保護保存する方法をあれこれ考えました。ハードディスクの定期的な買い替え、バックアップ。しかし、それだけでは個人のモノとして終わってしまいます。貴重なものも少なからず。そこで、それらを「アーカイヴ」にしようと思いつきました。
まず、動画サイトのアカウントとFacebookに「Performance Art Moving Images Archive Hechima」という名前のページを作りました。さらに、方向性を模索する中、名前に「Independent Performance Artists」という言葉を加え、アーティスト視線のアーカイヴであることを大事にしようと考えました。そこで、当時、近くにいたアーティストたちとの協力し、2016年5月、正式にアーカイヴは「設立」しました。
2017年からは、年に2回くらいのペースで、都内で紹介イベントを開き始めました。そして、少しずつ、知られ、このアイデアに賛同/応援する人たちが、それぞれの興味やスキルを持ち寄って協力するようになりました。2018年12月には、web siteを開設しました。データは、山岡が持っていたものに加えて、メンバーであるアーティストの北山聖子の手持ちの動画も加えました。また、アーティストたちにコンタクトをとり、少しずつですが、データを寄贈してもらっています。
アーカイヴは、様々な個性的なアーティストの作品記録を残すことが目的なので、地域、性別、政治的立場、テーマなどを絞ることはしていません。だからと言って、パフォーマンスアートのデータを全世界網羅的に集めることは不可能です。メンバーは数人いますが、皆、他に仕事を持ち、ボランティアで参加していますので、正直、なかなか、作業はすすみません。それでも、時に勉強会を催し、時間を作りミーティングをし、どんな方向/方針を持つべきか、話し合っています。たとえば、大きな美術館や大学などが、集中して収集している資料は、そちらにお任せてしても良いと考えます。むしろ、このアーカイヴは、私たちが活動する中の出会いから、縁があったり、興味を持った作品、アーティスト、プロジェクトを一つ一つ、資料にする、というので、良いのではないか。それは一種のいい意味での魅力あるローカリティではないでしょうか。そして、それが結果的にアーカイヴの個性になればと考えます。