2024年IPAMIAは、コレクティブな企画として「Durational Performance Project Tokyo (DPPT)」を設立しました。メンバーとしては、山﨑千尋、石田高大、北山聖子、山岡さ希子が参加しています。2025年以降も続けていきます。
Durational Performance (デュレーショナル・パフォーマンス)とは、 通常考えられているよりも長い時間、大きめの身体的負荷をかけて行われるパフォーマンスアートを示します。このような表現は洋の東西を問わず、過去にも現在にも記録/記憶/実践されていますが、デュレーショナルという言葉自体は、おそらく1990年代の中頃から 欧米を中心に使われるようになったと思われます。実際、アーティストたちはどのような実践と経験により、それを発展しさせ、どのような希望をパフォーマンスアートシーンで育てているのでしょう。IPAMIA、およびDPPTではそれらをリサーチしています。
Durational Performance (デュレーショナル・パフォーマンス)は、目の前の観客に対して、何かをナラティブ、もしくはシンボリックに見せるショーケースな形のものではありません。そして、単に長時間行うというわけでもありません。Durational Performanceは、彼らのLifeそのもののその経験を、リアルタイムな身体と時間を使って、そこに「存在させる」といったパフォーマンスのことを言います。観客はその時空を共有することから、想像力を膨らますことができます。ずっと滞在してもいいし、適当な時間を選んで見にきたり、いろんな方法で関わることができます。または、空間と時間の制約により、それらはビデオや写真の作品として紹介されることも多いです。コンセプチュアルな作品の場合は、そもそも観客を呼んではいない場合も多いです。
プロジェクトでは、それに関わる資料をリサーチしながら、ワークショップ、ディスカッション、レクチャー、パフォーマンス、テキスト、展覧会(公演)を積み重ねています。
2024年には、7回のワークショップ、海外からのアーティストのイベント2回、そして、12月にはメンバー全員によるパフォーマンスを東京駅丸の内口広場で12時間行いました。記録のページは現在作成中です。
《DPPTメンバー(現在4名)》
山﨑千尋 Yamazaki Chihiro
1990年、北海道生まれ。2009年に東京芸術大学絵画科油画専攻にて現代美術を学び、同大学大学院ではフィールドワークを基軸とした実地研究を始める。2014年「大館・北秋田芸術祭2014 里に犬、山に熊」や、2016年「福島現代美術ビエンナーレ」など数多く都外の芸術祭に参加し、サイトスペシフィックなスタイルを確立さる。インド・カシミール州でのレジデンスを機に「不可視化された支配」をテーマに、メディアを限定しない多様な表現活動をしている。近年は「身体の支配」をテーマに自身の家族が脳死状態に陥った経験をモチーフとして映像作品と論文を制作。同大学にて博士号を取得。
北山聖子Kitayama Seiko
1982年、長野県生まれ。2008年よりパフォーマンスアートを始め、国内外のパフォーマンスフェスティバルに参加。2010年代は、観客をパフォーマンスに引き込むパ フォーマンスを展開。2020年前後より自宅や自然の中など身近な環境の中でパフォーマンスを行うようになり、近年では一日中影を追いかける《Chasing a Shadow》や、 花が咲く時間に合わせパフォーマンスする《Waiting for Flowers》、観客から集めた動詞を6時間かけてアーティストが行う《Verbs》などドュレーショナルパフォーマンス を多く行なっている。 IPAMIAリサーチメンバー。https://seikokitayama.com
山岡さ希子Yamaoka Sakiko
1961年生まれ。1992年ごろから、パフォーマンスアート、ドローイング、インタビューを含む映像作品などを制作する。都市空間の介入作品が多いが、ギャラリーや一般の空間での作品もある。立ち会ったあらゆる人との間で生まれる、相互違った体験の総体を作品と考える。個人の欲望と社会制度との軋轢、身体とその意志との齟齬や疎通から来る様々な不安、愚昧とも言える行為、そうした中から生まれる名付けようもないエネルギーに興味がある。予測できない状態をあえて作り、そのつどの選択により、新たな現実に出会う。リアルとフィクションを様々なレベルで混ぜ合わせ、しばしば、ユーモアによってそれらをつなぐ。ドュレーショナルなパフォーマンスも多く行ってきた。IPAMIA代表。 https://Sakikoyamaoka.com
石田高大 Ishida Takahiro
1995年、富山県富山市生まれ。2020年東京大学農学部環境資源科学課程卒業。 大学在学中、芸術に広く関心を持つようになる。2020年頃より、撮影スタジオや路上にて、その場にあったものや日用品を使って思うままに踊り、遊ぶ、その様子を知人に写真に撮ってもらっていた。次第に、パフォーマンスアートとして制作を始めた。制作では、自身の経験や内面の世界に最初の着想を得ている。https://linktr.ee/takahiroishida