今回、IPAMIAでは、中国のパフォーマンスアーティスト王彦鑫の作品を紹介します。王彦鑫は、国際的に活躍する経験豊富なパフォーマンスアーティストです。IPAMIAで紹介している童文敏(トン・ウェンミン)や、四川美術学院で教鞭を執る周斌(ジョウ・ビン)と同様に、四川地方を拠点に活発な活動を展開しています。中国では、パフォーマンスアートが高い熱意をもって多くのアーティストによって探求され続けています。
王彦鑫は、真っすぐで、何事も素直に表現する、とにかく「いいやつ!」という人柄です。しかし、その率直さが中国という巨大な土地の中で表現されると、どこか切なく、やりきれない感覚を覚えます。(北山)
略歴
1988年に甘肃省蘭州市で生まれ、2013年に四川美術学院新メディア学科を卒業。現在は成都で生活、制作しており、2013年以降、主にパフォーマンスアートを中心にメディアアートの制作を行っている。現在、四川文化芸術学院で副教授を務めている。
アーティストステイトメント
王彦鑫は、身体を通じて世界を体験し、探求し続けるパフォーマンス・アーティストである。彼はパフォーマンスの言語に極めて敏感であり、「いま・ここ」における現前性の概念を重視している。パフォーマンスは歴史的記憶、時間、儀式、トラウマとの関係を強く意識しており、彼の作品には個人的なヒロイズムの壮大さと遊びのアイロニーが混在している。作品は短い演劇的な形式で展開され、複数の断片が組み合わさることで、時に得体の知れない悲しみを呼び起こし、時にブラックユーモアとして笑いを誘う。
生々しい激しさと痛切なメランコリーが、彼の身体の緊張感を形作る。自己罰、挑発、衝撃は彼の実践において頻繁に用いられ、感情と痛みが力強い行動と断固たる意志の間で広がり、歴史的記憶とトラウマの追体験・再解釈を生み出していく。
website:wangyanxin.com
title: 砂珠玉
date: 2024年7月
venue: 青海共和砂漠
organized by 大浦当代艺术馆, curated by 崔付利
camera and edited by: 王彦鑫
《沙珠玉》は、中国・青海湖の共和砂漠を舞台に、自然の景観と歴史的な象徴が交錯することで、孤独と葛藤に満ちた荒涼とした情景を描き出している。
本作は、極限の自然環境における人間の自由、孤独、そして存在の意味について問いかける。アーティストは象徴的な要素を通じて、緊張感と象徴性に満ちた空間を構築し、自然と生命の前における人間の小ささと、それでもなお抗う姿を浮かび上がらせる。象徴的かつ具体的なシーンが織りなすこの空間は、荒涼としながらも生命力に満ち、人間が極限状況の中でいかに内なる孤独と闘いながら向き合うのかを探求している。
砂漠はひとつの隠喩である。この果てしない荒野の中で、私たちは果たして自分自身の方向を見つけることができるのだろうか。(王彦鑫ポートフォリオより)
title: When we meet again-Action video
date: 2018-2022年
venue: 福島原発の放射線隔離区、前重慶電力発電所
project: Responding International Performance Art Festival and Meetings R1(2018、福島), DIMENSIONS ART CENTER (2018-2022、重慶、中国)でのレジデンスにおいて撮影されたビデオ
camera: 王彦鑫、北山聖子、靳彤
edited by: 王彦鑫
アーティストは、日本の福島原発隔離区域で、夕暮れ時に口に懐中電灯をくわえ、放置された家屋や日用品を照らす。LEDライトをつけた服を身にまとい、幽霊のように舞いながら、夜の中で前へ進む道を探し求める。「原発事故による放射能漏れによって、美しい記憶と故郷は崩壊し、個人の記憶も集団の記憶もすべて失われた。政府が再び原発を再建し、人々に帰還を促す背後には、経済的利益と政権の思惑が絡み合ったもう一つの嘘が潜んでいる。それはまるで、夢のようにはかなく砕け散る幻想である。」ビデオの後半には、ワンヤンシンが重慶でのレジデンス中に制作した前重慶電力発電所でのパフォーマンスも含まれており、重慶でのパフォーマンスと福島でのパフォーマンスがクロスオーバーしているように見える。(王彦鑫ポートフォリオより)
title: Couldn’t Repair
date: 2022年10月
venue: 成都広汇美術館organized by 成都広汇美術館
camera and edited by: 王彦鑫
このパフォーマンスでは、風船の花、白鳥の入れ物に入ったお菓子、天使のろうそく、銃の形のライター、バイオリンなど、人々の特別な思い出を想起させるようなマテリアルたちが使用され、時に暴力的に破壊される。ビデオの最後には「暴力、失われた記憶、失われた命、そして現在の無力感」という文が示される。
title: Circle-Body-Rhythm
date: 2019年
venue: 成都A4美術館
project: Upon International Performance Art Festiva, organized by 周斌
camera and edited by: 王彦鑫
このパフォーマンスはアーティストによる5つのアクションによって構成されている。1リングを投げる、2 円を拭く、3風船を放つ、4 服を飛ばす、5 ビー玉をこぼす。リングを投げるアクションでは、観客はワンヤンシンをピンに見たてリングを入れる遊びを楽しむ。ビー玉を転ばすことも観客に直接的に関わる方法でもある。螺旋状の構造の中、観客とアーティストとの関係は時に暴力的に、時に楽しげな遊びのようにも見える。
title: Wheel
date: 2021年8月
venue: 上海新華路(旧フランス租界)
project: Shanghai Urban Space Art Season 2021, organized by 沈烈毅 ,石玩玩
camera and edited by: 王彦鑫
アーティストは上海の街を廃棄された車輪を押しながら歩き、アーティストの背後には羽が舞っている。わたしたちはアーティストが肉体を酷使しているのを見ると同時に上海の街や人々の様子も同時に観ることとなる。
title: 白
date: 2017年
venue: 雲南省麗江玉龍雪山の下
project: In the clouds International Performance Art Festival, organized by 和丽斌
camera and edited by: 王彦鑫
アーティストは、折れた松の木の上に立ち、裸に白い布をまとっている。風が白い布を吹き、雪山の前でひらひらと舞う。その中で、身体が徐々に現れていく。(王彦鑫ポートフォリオより)